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薬草園歳時記(8)落花生 2021年9月


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薬草園のラッカセイ(薬草園提供)

 ラッカセイ漢字では落花生、別名ではナンキンマメ(南京豆)、ピーナッツともいう。英語名は、peanut, groundnut, goober, pindar, monkey nutなどがある。中国名も落花生である。
 花期は9月、生薬名は、落花生(ラッカセイ)、落花生枝葉(ラッカセイシヨウ)、落花生油(ラッカセイユ)がある。薬用部位が、それぞれ種子、地上部、種子を搾った油で、成分は、種子に脂肪油、サポニン、ビタミンがある。
 南米原産とされるが、世界各地で栽培されている。南米から東アジアを経由して、江戸時代に日本に持ち込まれたといわれており、日本の各地で主に食用として栽培されている。

 最も古い出土品は、ペルーのリマ近郊の紀元前2500年前の遺跡から出土したもので、大量の落花生の殻である。また、紀元前850年頃のモチェ文化の副葬品にもラッカセイが含まれている。16世紀のスペイン人修道士の記録で、アステカ族の落花生の記述があるが、食糧ではなく薬とされていた。カリブ海の島々でも落花生が重要な食糧とされていた。大航海時代、ヨーロッパに落花生が紹介されたが、土の中でできるためマメ類の常識と違う奇妙な存在として受け入れられなかった。ラッカセイの栽培が広がったのは16世紀中頃であった。

 落花生は1年草で、茎は根元で分枝する。地に広がり、長さ約60 cm程度、偶数羽状複葉で2対の小葉を持つ。花は無柄の黄色い蝶形花で、花が咲く前に自家受粉する。花が咲いて数日経つと子房柄(子房と花托との間の部分)が下方に、長柄状に伸びて、これが地中に潜り込んで、地中で豆果を実らせる。地下結実性という。
 花が落ちて地中で実を生むことから「落花生」という名前が付けられた。日本の地方名では、沖縄方言の地豆(ぢまめ、ジーマーミ)、唐人豆(とうじんまめ)、異人豆(いじんまめ)、鹿児島県のだっきしょ(落花生)、長崎県のドーハッセン、ローハッセン(落花生)、高知県の底豆などがある。

 ピーナット(Peanut)または、ピーナッツ(peanuts)の語源は、Peaピー(エンドウマメ)とNutsナッツ(木の実)であるが、本当は、エンドウマメでもなく、また、木の実ではない。
 薬効と用途は、乾咳、脚気、乳汁不足には生の種子を粉末にして煎じて服用する。打撲傷には、地上部の煎液を患部に塗布する。また、落花生油は食用、工業用に利用されるほか、火傷や凍瘡などに外用する。

 南京豆と呼ばれるとおり、日本の落花生は主として中国から来る。日本で初めての落花生の栽培は、1871年(明治4年)の神奈川県大磯町の農家だという。今、日本産では、千葉県中央部の八街市が生産量で日本一である。県別で茨城県が2位、千葉県と合わせると日本全体の9割を超える。神奈川県、栃木県、鹿児島県が続く。
 千葉県では、収穫した落花生を乾燥させるために円筒状の野積みを作る。ボッチ積み、豆ぼっち、落花生ぼっちなどと呼ぶ。千葉県を代表する作物の落花生の秋の収穫期の畑に、たくさんのぼっちが並び、独特の景観を作る。ぼっちによる乾燥は、産地での栽培経験から生み出された日本独自のものである。
 静岡県との関連では、1904年、アメリカ合衆国セントルイス万国博覧会で、日本の静岡県西部(遠州地方)から出品された遠州半立(遠州小落花)が金賞をとった。浜松市浜北区に残っていた種子から、今、栽培種として復活が試みられている浜松市の杉山孝尚さんが荒廃した農地から探し出して栽培し、静岡県が2020年度の「ふじのくに新商品セレクション」に認定した。

ひしめけり掘られて風の落花生   石田波郷
南京豆黙つて坐りひとつかみ    加藤秋邨

落花生の花と子房柄と地中に出来はじめた実(左) 地中の実を掘り出してみる(右)
(2021年9月16日午前、薬草園の山本羊一さん提供)

 文部科学省「食品成分データベース」で「らっかせい」というキーワードで検索すると以下の項目があることがわかる。落花生の食べ方の種類である。その中で私の好みのものを選んで紹介する。

 種実類/らっかせい/大粒種/乾
 種実類/らっかせい/大粒種/いり
 種実類/らっかせい/バターピーナッツ
 種実類/らっかせい/ピーナッツバター
 種実類/らっかせい/小粒種/乾
 種実類/らっかせい/小粒種/いり
 野菜類/らっかせい/未熟豆/生
 野菜類/らっかせい/未熟豆/ゆで
 油脂類/(植物油脂類)/落花生油
 菓子類/<和干菓子類>/おのろけ豆
 菓子類/<和干菓子類>/小麦粉せんべい/南部せんべい/落花生入り

 「種実類/らっかせい/大粒種/いり」の100g当たりのエネルギーは613kcalで、脂質49.6g、無機質では、ナトリウム2mg、カリウム760mg、カルシウム50mg、マグネシウム200mg、リン390mg、鉄1.7mgなどが含まれる。
 バターピーナッツになると、100g当たりのエネルギーは599kcal、脂質53.2gであるが、ナトリウムが350mgである。野菜類の「未熟豆/ゆで」では、同じく298kcal、脂質23.5gである。
 要するに、煎った落花生やバターピーナッツは食べ過ぎないように気をつけなければならないが、9月頃に出回る未熟豆を茹でたものは、ある程度たくさん食べることができるのである。
 落花生の薬膳に関連するウェブサイトは多い。例えば、千葉市若葉区の「薬膳料理教室とコミュニティーサロン『ゆず葉』のホームページ」によると「千葉の落花生生産量は全国の約80%を占めているそうです。ホクホクして茹で落花生は産地ならでは? 千産千消の秋の薬膳です。今年は、昨年デビューした新品種「Qナッツ」を茹でました? 大きくて甘い「おおまさり」よりあっさりで上品なお味です」とあって、薬膳的効能、止咳化痰、健脾和胃、潤肺、養血止血、潤腸通便とある。さらに、「補血類」とあり、「肺を潤す効果があり、咳を鎮めます。薄皮には血を補う効能が期待できます。薄皮も一緒に食べてくださいね。また、止血作用や嘔吐感を抑える作用があると言われ、殻の煎じ汁は、高脂血症を改善することで知られています」と続く。また、「落花生は中国語で「花生」hua sheng「長生果」=長寿の薬とも呼ばれています。滋養強壮や老化防止には欠かせない食材です」と説明があって、その調理法が掲載されている。

 テレビのクイズ番組で、節分の豆まきに大豆を撒く地域と落花生を撒く地域があるということを知った。北海道から東北地方、それと宮崎県、鹿児島県では節分の豆まきに落花生を撒く。京都でも高知でも静岡でも豆まきは大豆である。落花生の産地である千葉では大豆をまき、大豆の産地の北海道では落花生を撒く。
 このことを千葉県出身の俳人である片山由美子さんに伝えた。すると千葉の落花生の食べ方をいろいろと教えていただくことになり、さっそく自分でも台所で作業することになった。近所の生協では生の落花生がないので、千葉産の生の落花生を通信販売で手配し、無塩で煎った落花生で味噌豆を作ってみた。それなりに美味しいものができた。
 翌日、到着した生の落花生をそのまま囓ってみるととても甘い味がした。まず塩ゆでにして食べた。次に味噌豆を作った。三温糖をたっぷりとみりんを少し加え、味噌を少しずつ加えて味を見ながら仕上げた。冷めたときに固まることを念頭に置いて仕上げた。調理中の味見だけでもたくさん食べることになった。
 次に、水に一晩浸けておいて朝、柔らかく煮豆を作ってみた。これも冷えて固まることを念頭に置きながら、やや甘めの甘味と醤油で味つけして仕上げた。やはり味見でたくさん食べた。さらに、塩ゆでの殻付きの落花生を千葉から取り寄せた。昔食べた味を思い出して、それを剝いて山形のつや姫に炊き込んでみた。最高の落花生ご飯ができたので、帆立の貝柱と鮭のほぐした身を入れてご飯を仕上げた。秋の味のご飯である。

落花生の蔓かさ高に藁の傘     和夫
味見また味見の煮豆落花生
天に咲き大地へもぐり落花生

左から塩ゆで、味噌豆、煮豆の落花生(調理と撮影は筆者)

 さらに、思いがけず、片山由美子さんから、さすが千葉のご出身と言える落花生のさまざまな食べ方をと、現物が届けられた。

【写真左】左は沖縄の「ジーマーミ豆腐」、右上は千葉県産本場八街の味「落花生みそ」、右下は広島の「みそ落花生」。
【写真右】素煎りの落花生。

 「ジーマーミ豆腐」は、落花生を使った沖縄県や鹿児島県の郷土料理である。ジーマーミは漢字で「地豆」であり、琉球語で落花生の意味である。ヂーマミーともいう。南西諸島以外ではピーナッツ豆腐、落花生豆腐、だっきしょ豆腐とも呼ばれる。片山さんからの荷物には写真の他にも、長崎胡麻とうふ「ピーナッツとうふ」も入っていた。ジーマーミ豆腐は、落花生の絞り汁に芋くず(首里方言でイムクジ、サツマイモの澱粉)を加えて作る。もちもちとした食感である。沖縄県内や鹿児島県内のスーパーマーケット、市場などに普通に市販されていて、甘いタレが付いている。
 「落花生味噌」は農林水産省の「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」のウェブサイトに詳しく紹介されており、「いまでも生落花生が手に入ったときには、好みの味付けで「落花生味噌」をつくり、常備菜としている家庭も少なくない」とある。

 このエッセイについて、薬学部附属薬草園の専門員、山本羊一さんに多くの貴重なご意見をいただいた。記して謝意を表する。


尾池 和夫


文部科学省「食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/

農林水産省「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/rakkasei_miso_chiba.html

「遠州半立」の記事(日本農業新聞)
https://www.agrinews.co.jp/society/index/24184

薬膳料理教室とコミュニティーサロン『ゆず葉』のホームページ
https://yuzuha-yakuzen.com/archives/923

薬学部の薬草園サイトはこちらからご覧ください。
https://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/~yakusou/Botany_home.htm

キャンパスの植物は、食品栄養科学部の下記のサイトでもお楽しみいただけます。
https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/four_seasons/

下記は、大学外のサイトです。
静岡新聞「まんが静岡のDNA」の記事でも薬草園を紹介しました。
https://www.at-s.com/news/article/featured/culture_life/kenritsudai_column/742410.html?lbl=849

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